紅芋、その鮮やかな色彩と豊富な栄養で注目を集める沖縄の特産品。健康志向の高まりと共に、その魅力が再発見されています。本記事では、紅芋の起源から栄養価、活用法まで、この美しい食材の全てを紐解きます。

 

紅芋とは?

紅芋は、沖縄県を中心に栽培されるヤマノイモ科の芋で、サツマイモに似ていますが、ヤマイモや長芋の仲間です。

その赤紫色の肉色はアントシアニンによるもので、抗酸化作用が高く評価されています。

 

紅芋の歴史と背景

紅芋の歴史は、1605年に中国の福建省から沖縄に持ち帰られたことに始まります。この時、野国総管(のぐにそうかん)と呼ばれる人物が、中国から紅芋の苗を持ち帰りました。その後、紅芋は沖縄中に広まり、さらに日本本土にも伝播していきました。

沖縄の食文化に大きな影響を与えました。沖縄は石灰質で水はけの良い土壌が多く、紅芋の栽培に適している地域です。紅芋は、美しい赤紫色の肉質と独特の甘さが特徴で、食物繊維やミネラル、ビタミンなどの栄養価が高いことから、健康食品としても注目されています。

沖縄の紅イモ文化は、その原点として「宮農36号」を挙げることができます。1970年代後半、読谷村で宮農36号を使用した紅イモでむらおこし事業が行われたことから、「読谷紅イモ」として地域ブランドが確立し、沖縄県内各地で栽培されるようになりました。この時代まで、沖縄では紅イモの肉色に対する関心は薄く、主に収量や食味を重視して選抜が行われていました。しかし、濃紫色系の品種として「宮農36号」が1968年の琉球農業試験場の資料に記録されており、これが沖縄における紅イモの原点となりました。

「宮農36号」は、「紅」×「ハワイ」の交配によって育成されました。この品種の育成は、垣花実記によって行われ、1947年に始まりました。この品種は、沖縄の紅イモ文化の発展に大きな影響を与え、読谷村をはじめとする沖縄県内で広く栽培されるようになりました。その後、様々な紅イモ品種が登場し、それぞれが独自の特性を持ちながら沖縄の特産品としての地位を築いています。

主な紅イモの品種には、「宮農36号」、「備瀬」、「ハワイ紅」、「V4」、「沖夢紫」、「ちゅら恋紅」があります。これらの品種は、それぞれ異なる特徴を持ち、加工用や生食用など様々な用途で利用されています。特に「宮農36号」は、紅イモ品種の戦後からの軌跡において重要な役割を果たしており、沖縄の紅イモ文化を象徴する品種として知られています。

紅イモの新品種育成に向けた試みも続けられており、「沖夢紫」と「ちゅら恋紅」は「備瀬」と「V4」の交配によって育成された新しい品種です。これらの品種は、肉色の濃紫色と優れた食味が特徴であり、沖縄の紅イモ文化をさらに豊かにしています。

沖縄の紅イモ文化は、これらの品種の育成と普及によって発展してきました。それぞれの品種が持つ独自の色彩と風味は、沖縄の食文化に欠かせない要素となっており、今後も沖縄の特産品としての価値を高めていくことが期待されています。

 

主な紅芋の種類

沖縄の紅イモ品種には、それぞれ独自の特徴があり、色彩、食感、甘さなどに違いが見られます。以下は、主な紅イモ品種の特徴をまとめたものです。

 

宮農36号

  • 特徴: 1947年に育成された沖縄の紅イモの代表品種。濃紫色の肉色と優れた食味が特徴。
  • 用途: 主に加工用として利用され、紅イモタルトなどの菓子原料に適しています。
  • 評価: 色彩が鮮やかで、食味が良いと高く評価されていますが、かいよう病の影響で栽培が難しい場合があります。

備瀬

  • 特徴: 白い皮と濃紫の肉色を持ち、ホクホクした食感と甘みがあります。
  • 用途: 加工用としての利用が多く、紅イモペーストやスイーツの原料に使われます。
  • 評価: 「宮農36号」に代わり、紅イモ文化を支える主要品種の一つとして普及しました。

ハワイ紅

  • 特徴: 来歴不明の幻の品種で、白皮に濃紫色の肉色を持つ品種です。
  • 用途: 主に加工用として利用され、紅イモペーストなどに使用されます。
  • 評価: 栽培が難しく、現在ではあまり見かけない稀少な品種です。

V4

  • 特徴: 濃紫色の肉色が特徴で、外観が美しい品種ですが、食味に関しては評価が分かれる場合があります。
  • 用途: 加工用に適しており、色鮮やかな紅イモペーストの原料として使用されます。
  • 評価: 色彩の美しさから加工業者に好まれますが、えぐみが強く食用には適さないとされることもあります。

沖夢紫(おきゆめむらさき)

  • 特徴: 濃紫色で甘みが強く、ねっとり系の肉質が特徴です。
  • 用途: 生食用や加工用として多方面で利用され、特に焼きいもやスイーツに適しています。
  • 評価: 高い食味評価を受けており、久米島や石垣島などで栽培されています。

ちゅら恋紅

  • 特徴: 赤みを帯びた濃紫色の肉色と、ホクホクした食感が特徴です。
  • 用途: 加工用として特に適しており、紅イモペーストや菓子原料に使用されます。
  • 評価: 「V4」の改良品種として、肉色の安定性と食味の良さで栽培面積が拡大しています。

 

紅芋の豆知識

紅芋の特徴的な赤紫色は加熱しても変わりません。また、沖縄方言で「ウム」「アコン」とも呼ばれ、さまざまな加工品の原料として利用されています。

 

栄養成分と健康への効果など

紅芋はビタミンA、C、カリウム、食物繊維を豊富に含みます。アントシアニンの抗酸化作用は、動脈硬化やコレステロールの抑制に効果があるとされています。

 

沖縄の生活習慣と紅芋

沖縄の特有の土壌「島尻マージ」は紅芋の栽培に適しています。紅芋は沖縄の人々の生活に深く根ざし、羊羹や饅頭、チップスなど、多彩な商品が生まれています。

 

選び方と保存方法

新鮮な紅芋は、皮がしっかりとしており、傷やへこみが少ないものを選びましょう。保存は冷蔵庫ではなく、新聞紙で包み暗所で保管するのが適しています。

 

料理での活用法

紅芋はそのまま蒸して食べるのが一般的ですが、色を生かしたお菓子や料理にも幅広く活用されています。上品な甘さとねっとりとした食感が特徴です。

 

紅芋のおすすめレシピ

紅いもコロッケのレシピ

材料(4人分)

  • 紅イモ:1kg
  • ボーク(または挽肉):200g~300g
  • 小麦粉:1カップ強
  • にんじん:1本
  • ねぎ:1束
  • 塩:少々
  • こしょう:少々
  • 卵:1~2個(衣用)
  • パン粉:適宜
  • 揚げ油:適宜

下準備

  1. 紅イモは皮を剥いて一口大に切り、蒸し器で柔らかくなるまで蒸します。
  2. ポーク(または挽肉)はみじん切りにし、フライパンで軽く炒めます。
  3. にんじんは皮を剥いてみじん切りにし、軽く炒めます。
  4. ねぎは白い部分を中心にみじん切りにします。

作り方

  1. 紅イモの下処理: 蒸した紅イモをボウルに移し、つぶします。この時、マッシャーがあれば便利ですが、フォークで丁寧につぶしても良いです。
  2. 具材の準備: フライパンで炒めたポーク、にんじん、そして生のみじん切りにしたねぎをボウルに加えます。
  3. 調味: 塩、こしょうで味付けし、小麦粉1カップ強を加えてよく混ぜ合わせます。小麦粉はコロッケの形を保つために重要です。
  4. 成形: 手に少量の小麦粉をつけ、混ぜ合わせた紅イモの生地を適量取り、たわら型またはお好みの形に成形します。
  5. 衣をつける: 成形したコロッケにまず小麦粉、次に溶き卵、最後にパン粉をつけます。この際、コロッケが崩れないように優しく扱ってください。
  6. 揚げる: 180度に熱した揚げ油で、コロッケがきつね色になるまで揚げます。揚げる時はコロッケが重ならないようにし、均等に揚げ焼き色がつくように注意してください。

 

収穫時期と購入時期

紅芋は1月から12月まで収穫されますが、ピークは8月から11月です。この時期には新鮮な紅芋を手に入れることができます。

 

紅芋の詳しい情報

項目 情報
沖縄方言名 ウム(沖縄本島)、ンム(宮古)、アコン(石垣)
和名 さつまいも
別名 かんしょ
農産物区分 野菜(根菜類)
科名 ヒルガオ科
生産地 本島中部読谷村

 

成分表:可食部100g当たり

成分名 単位
エネルギー 129.0 kcal
たんぱく質 0.7 g
脂質 0.2 g
カルシウム 42.2 mg
0.7 mg
ビタミンA 1.0 μg (レチノール当量)
ビタミンB1 0.11 mg
ビタミンB2 0.02 mg
ビタミンB6 0.15 mg
ビタミンC 24.0 mg
食物繊維(総量) 2.7 g

沖縄からの紅芋持ち出し禁止についての重要な理由

沖縄県は、その豊かな自然と独特の文化で知られ、特に「紅芋」は沖縄の代表的な農産物の一つです。紅芋は、その美しい色鮮やかな紫色と、栄養価の高さから多くの人々に愛されています。しかし、沖縄から生の紅芋を持ち出すことが、法律によって禁止されていることをご存知でしょうか。

この措置は、紅芋をはじめとするイモ類に寄生する害虫の拡散を防ぐために設けられました。特に「アリモドキゾウムシ」や「イモゾウムシ」などの害虫が問題となっています。これらの害虫は沖縄県内や奄美大島、小笠原諸島などの南西諸島で発生しており、イモ類に甚大な被害を与える可能性があります。

害虫による被害の深刻さ

これらの害虫はイモ類の成長を妨げるだけでなく、収穫量の減少や品質の悪化を引き起こすことがあります。さらに、これらの害虫は非常に発見が困難で、一度広がると駆除が難しいという特性があります。そのため、これらの害虫が沖縄から本州など他の地域に持ち込まれることは、日本全国のイモ類の生産に深刻な影響を及ぼす恐れがあります。

法律による規制の意義

このような背景から、生の紅芋をはじめとするイモ類の沖縄県外への持ち出しを禁止する法律が設けられました。この法律は、日本の農業を害虫の脅威から守るための重要な措置です。もちろん、紅芋などのイモ類の加工品や種子は規制の対象外であり、これらは自由に持ち出すことができます。

 

まとめ

紅芋は、美しい色彩だけでなく、その栄養価と多様な活用法で、沖縄だけでなく世界中の食卓を豊かにしています。この特産品を通じて、沖縄の自然と文化をぜひ味わってください。

 

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